目的と特色
青森県が直面している教育課題に対して、理論と実践との往還・融合を通じた省察をもとに、学校内外の専門家と協働しながら、その解決に向けた教育実践を創造しリードしていく教員を養成します。「教職実践専攻」は、理論と実践との往還・融合を通じた省察をもとに、青森県が直面する教育課題の解決をめざした教育実践を創造し、リードしていく教員を養成する場です。そこには、教員に求められる4つの力(自律的発展力・課題探究力・省察力・協働力)を養成するカリキュラムが用意されています。現職教員院生の「ミドルリーダー養成コース」と学部卒院生の「学校教育実践コース」「教科領域実践コース」「特別支援実践コース」があり、修了すると教職修士(専門職)の学位が授与され、また専修免許状を取得することができます。平成29年4月に開設され、令和2年4月に改組された新しい教職大学院です。
なお、青森県の教員採用試験に合格した教職大学院進学予定者及び在学中の採用候補者に対して、教職大学院を修了し、かつ合格した出願区分の校種・教科(科目)の専修免許状を取得することを条件に、最大2年間(在学中の者は1年間)採用を延期できる特例措置が青森県教育委員会から認められています。
開設の目的
1.開設の目的
教育科学及び教科教育学の諸科学について、精深な教育研究を行うと共に、高度な教育実践を創造しリードするための資質能力を備えた教育職員等の養成を目的とする。
2.設置コースと養成する教員像
教育課程等の特色
- 「基礎科目」「独自テーマ科目」「発展科目」「教育実践研究科目」「実習科目」からなる「理論と実践との往還・融合」を担保するカリキュラム編成
- 「独自テーマ科目」として,青森県教育委員会から要望のあった環境教育,健康教育,インクルーシブ教育システムに関する科目を開設
- 「教育実践研究科目」「実習科目」は,理論と実践との往還・融合をより確かなものにするために関連性を持たせ,附属学校園や連携協力校,勤務校などでの実習を通して教育課題の追究・解決・検証を実践的に行う
青森県教育委員会教育長からのメッセージ
教育実践を創造する教員の養成に向けて
県教育委員会では、教育施策の方針に「郷土に誇りを持ち、多様性を尊重し、創造力豊かで、新しい時代を主体的に切り拓く人づくり」を掲げ、こどもたちが多様な学びや様々な体験、地域とのつながりを通じ、ふるさと青森県に誇りと愛着を持ち、自立した人間として成長できるよう、夢や志の実現に向け、知・徳・体を育む学校教育の推進に取り組んでおります。
こうした取組を推進するにあたり、こどもたちの「学びと挑戦」「主体性」「対話」の3つの力を醸成することが必要です。そのためには、まず学校教育の直接の担い手である教員が当事者としてこれらの3つの力を身に付けることが大切です。
教職大学院では、本県の教育課題を重点的に学ぶことができる科目群の設定や、大学院生一人一人の研究課題に対応できる指導体制の充実など、高度な教育実践を創造しリードするための資質・能力を備えた教員の養成に取り組まれています。
本県の現職教員が、校内研修、教材開発等において、創造的に課題に取り組むことを中心となって行うミドルリーダーになること、また、確かな実践力、省察力を育んだ大学院生が、若手教員として各学校で活躍していくことを切望しております。
そのためにも、教職大学院が研修の場にとどまらず、教員同士のネットワークを形成する場となり、県及び市町村教育委員会と連携しながら、本県教育を理論・実践両面において牽引していく拠点となることを期待しております。
プロフェッショナルチームを拓く協働的な運営体制
教職大学院の教育力を地域へ還元する連携協働システム
県教育委員会との連携・協働により、教職生活全体を通した職能成長の実現
- 青森県の今と未来をつくる子供たちを支える教員の資質・能力の持続可能な向上
- 教職大学院の教育力を現職教員の研修を通して各地域へ還元
研究科長からのメッセージ「広く深いフィールドビジョンをもった教員へ」
弘前大学教職大学院(教育学研究科教職実践専攻)では、育成すべき4つの力として「自律的発展力」「課題探究力」「省察力」「協働力」を掲げ、これらを養成するためのカリキュラムを用意して高度な専門性を有する「教育プロフェッショナル」を輩出することを目指しています。これら4つの力は、字面だけを追う限りは、すべての教員に求められる、「普遍的」な能力といえるでしょう。ただ漠然とそれらを追究するというのであれば、その特徴はあまりよく見えてはきません。
では弘前大学教職大学院の強みとは何でしょうか。第一に強調したいのは、徹底した「地域志向」、言い換えるなら「フィールド志向」です。この大学院は、平成29年度の設置以来、青森県教育委員会との連携協力のもと歩んできました。そして強力なパートナーシップによって、子どもと教師、そして社会のウェルビーイングの実現に取り組もうとしています。そのためには「個別具体的」な地域の教育課題を認識し、「個別最適」な学びを追究することが求められます。
この大学院には、他にも対義語的なカテゴリーがあります。院生に目を向ければ、学卒後間もない「ストレートマスター」と現職教員からなる「ミドルリーダー」。指導教員には「研究者教員」と「実務家教員」。しかしこれらのカテゴリーは、決して「対立軸」ではありません。むしろこうしたカテゴリーが融合し、それぞれ立場の異なる他者を想像し、尊重しながら自己のキャリアの発展を図ることができる、というのが第二のポイントです。
異質なもの、対立するものに対して排他的な視線が注がれることの多い現代社会において、「対立軸」なるものを相対化し、両極を幅広く捉え、そして先を深く見通すことのできるフィールドビジョンをもった教員へ。「教育プロフェッショナル」になる/としてさらに発展する皆さんのご入学を、心よりお待ちしております。
専攻長からのメッセージ「主張する強さと修正する勇気」
2017年雪解けの4月に産声をあげた弘前大学教職大学院も2020年に4期生をむかえ、31名の院生が学んでいます。31名の院生の成長を目の当たりにする機会が多く、設置準備から関わっていた者の予想をはるかに超える成果があったと確信しております。それは、厳しいスケジュールの中でも、常に自分と向き合いながら協働的に研究を深めようと努力していた院生の頑張りの賜物であり、そして、それを支えるために明るくかつ厳しく院生に接していた教員のおかげであると思っております。
教職大学院の授業は基本的には演習形式であり、必然的に議論をしながら授業を進めていくことが多くなります。これは、勤務校種、担当教科、さらには教職経験も全く異なる院生仲間や大学教員の意見を聴きながら自分の意見を主張することが各院生に求められていたことを意味します。
こうした授業の中では、まず、多様な意見や考え方が存在することを認めなければならなかったでしょう。その上で自分の考えを主張し他者を納得させるためには、他者の気持ちに配慮しながらも、自分の考えを精査し論理を組み立てていく必要があったと思います。自分の考えを精査し論理を組み立てることは、物事の判断の根拠を自分自身が持つことにもつながります。つまり、感情で判断せず根拠を基に論理を組み立て冷静かつ公正に判断することは、他者だけではなく自分自身にその判断の正しさを納得させるものともなるということです。さらに「他者を納得させる」という目的を持つことは、自分の主張を独りよがりなものにしないことにもつながります。そうした過程では、自分の考えを修正する必要もあったことと思います。まさに「主張する強さと修正する勇気」が日々の授業の中で院生に求められていたのでしょう。実習等の様々な場面での院生の発言が、4月当初に比べ他者の気持ちに寄り添いながらも、より説得力を持った主張となっていることに触れるたびに本学教職大学院の教育の成果を実感できうれしく思いました。
自分の研究テーマに沿って自立して研究を進めていく時間が多くなります。院生の皆さんは、よき教師、そして、学校でのよきリーダーとなるためのより一層の努力を惜しまないでほしいと願っております。
設置コース
ミドルリーダー養成コース
対象 | 原則として青森県教育委員会が派遣予定の公立学校教員 |
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教員像 | 校内研修、地域連携、教材開発などの課題に、中心となって他者と共に創造的に取り組むことができるミドルリーダー |
学校教育実践コース
教科領域実践コース
特別支援教育実践コース
対象 | 4年制大学を卒業もしくは3月末までに卒業見込みで、教員免許状を取得もしくは3月末までに取得見込みの者 |
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教員像 | 教育課題に対応するための理論と事実に基づいた確かな実践力・省察力を持つ若手教員 |